Cobalt's Movie Log

映画鑑賞の感想など

映画「閉鎖病棟」を鑑賞

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閉鎖病棟」という映画を観に行きました。

 

いい映画で感動しました。でもどこかで観たような気がすると思って、後から調べたら、昔の映画のリメイクでした。TVで見てストーリーだけ、なんとなく覚えていたようです。

 

精神病院に入院している患者たちの日常と、そこで起きた殺人事件などの群像劇です。原作・脚本がよく出来ていて、2時間の話としてすごくまとまっていました。起こった出来事よりも人間にフォーカスしている話なので、役者さんの演技力が求められる作品だったように思います。

 

そういう映画は、主に役者さんの演技を鑑賞することになります。邦画は日本人が演じているため、細かいところまで気になりますね。この映画は知らない役者さんが、患者としてたくさん出演されていますが、皆さんすごく頑張って演じているのが伝わってきました。

 

主役は映画のポスターの笑福亭鶴瓶さん、綾野剛さん、小松菜奈さんの3人になります。この3人の演技について感じたことを書きたいと思います。以下敬称を省略させていただきます。

 

 まず綾野剛について。とてもいい演技をする役者さんです。彼の演技力はほんとうに素晴らしいと思いました。憑依系の役者、カメレオン役者とかいわれてますが、役者本人のキャラが見えず、演じている役のみ前に出てくる演技をします。大袈裟すぎでもなく、わかりにくくもなく、観客として自然に観れるよい演技をしますね。いい役者さんだな、と以前から思っていましたが、この映画を観て、私の中では山田孝之と同じくらいの評価になりました。

 

次に笑福亭鶴瓶の演技について。もともと持っている人間的な魅力で、どんな役においてもいい味を出す人ですが、今回の映画では、やはり役者業の人ではないんだな、と感じました。役より本人のキャラが出ている感じがします。それと演技の引き出しがないというか、表現力が無いのが透けるというか。

 

お笑い芸人は、人の心をつかむのがうまくて、ライブで観客の反応をいつもダイレクトに感じながら仕事をしているので、中途半端な役者よりも演技のレベルが高い人も少なくありません。だからお笑いと役者を兼任できる人が多いのです。しかし役と本人のキャラがマッチしないときの、役の掘り下げ方は、やはり役者業の人より弱いですね。

 

今回の笑福亭鶴瓶の役は、自分の妻と母親を殺めた元死刑囚です。長年、面白おかしく仕事をしてきた鶴瓶師匠には無理な役だろうな、と感じました。笑福亭鶴瓶ももう70近い高齢者です。どう演じたらいいのかわからなくなっていると見える(少なくとも私にはそう感じた)シーンが何か所かあったように思えます。特に裁判のシーンが残念で、小松菜奈を引き立てる見せ場なのに、師匠の演技にいいところなし。他にいい役者さんいっぱいいるのに、ミスキャストだったのではと思います。

 

最後に小松菜奈の演技。汚れ役へ体当たりで、すごいと感心しました。ミステリアスな美少女を演じることが多い役者さんです。三白眼の切れ長の瞳と、スタイルのいい体格は、画面を華やかにします。今回は父親に犯されて妊娠したり、ヤクザに犯される女の子の役で、レイプシーンが2回もあるし、よくこんな役引き受けたなと、びっくりしました。でも頑張ってはいるのですが、難しい役柄を演じきれているとはいえず、演技の才能はそんなにない役者さんだったんだなあ、と思ってしまいました。今まで綺麗で可愛い女優さんとチヤホヤされてきた人生で、こんな役の心理は理解できないでしょう。

 

でもこの役に挑戦した小松菜奈も、挑戦させた事務所も、たいしたものだと思います。長期的な視点で本格的な女優を目指しているのでしょうね。例えば橋本環奈だったら絶対にやらない役です。この映画がさらなる成長へのきっかけになって、これからもっと素晴らしい役者さんになるかもしれません。

 

私にしては珍しく辛口なコメントでした。この映画のテーマとストーリーが重かったので、役者さんの演技に厳しくなったと思います。一応料金を払って観たので、これくらい許してください。いい映画ですので、小松菜奈さんの三白眼が好きな人は観に行きましょう。新しい彼女が見れます。興行収入が伸びるといいですね。