ゴッホの映画を観に行きました。予告編から楽しみにしてたんですね。怪優ウィレム・デフォーのゴッホのなりきりもすごそうだし、大好きなマッツ・ミケルセンも出てるし。
よかったです。
観るのに疲れる部分は多々ありましたが、映画はよく出来ていました。ウィレム・デフォーの演技もすごくよくて、これは代表作といえるのではないでしょうか。ゴッホは37歳で亡くなったので、64歳のウィレム・デフォーはさすがに年上過ぎだろう、と思ってましたが、まあそんなことはつまらんことだと気にならないくらいの存在感でした。天才芸術家の危なげな精神状態を見事に演じていました。
疲れる部分は、手持ちカメラの演出です。最初からずーっとゆらゆら画面が揺れているので、少し酔いました。ゴッホの揺れる精神世界に入り込むための演出かもしれませんが、勿体ないと思いましたね。画家出身の構図がうまい監督なら、固定カメラで正統派で撮ってほしかったなあ。没入効果はありますが、これは観客を選びますね。
ゴッホは映画の通り、苦しみの中で作品を産み出した芸術家でした。スキャンダルと絵画の独自性で、後に世界で誰しも知る芸術家として知られるようになりました。アートのアイコンとしてダ・ヴィンチと並んでいるかもしれません。
ゴッホのドラマや映画はその生き方のスキャンダラスな面や、弟とのつながりを主軸に描くものばかりでしたが、今回の映画はゴッホの感性について切り込んだ作品になっています。本当かどうかはわかりませんが、絵画芸術に関する理解が深まりました。
子供の頃に初めてゴッホを知ったときは、絵の具を厚く変に塗りたくることで、新しいアートの可能性を見つけた人、くらいの感性しか持っていませんでした。子供は技術的なテクニックくらいしか理解できないのですね。長く生きていろんな経験をしたり、芸術作品をいろいろ目にして、絵画の見方も変わりました。しかし油彩画の魅力は実物からしか得れません。この映画は、そのあたりのもどかしさに対しても、絵画のレプリカを上手に使ってよく表現していたと思います。
いい絵画を観たくなりました。